免疫力アップ!抗菌作用のある"アルファディフェンシン"も増やす北海道のタモギタケに注目

Yq7D6StTJtjz8OZ1484094487.jpg

あなたは、タモギタケというキノコをご存じでしょうか。タモギタケはヒラタケ目ヒラタケ科の菌で、北海道のニレの倒木などに自生しています。北国の短い夏の期間であれば、森の中で見つけることができるかもしれません。鮮やかな色の輝きを放つ色彩と希少性から、タモギタケは「幻のキノコ」と呼ばれて珍重されてきました。とても香り高く、歯ごたえも抜群で、北海道では古くから食用のキノコとして親しまれています。

北海道空知郡南幌町にあるスリービーという企業が人工栽培の技術開発に成功した1985年以降、タモギタケは少しずつ全国に広がっていきました。現在、北海道外のスーパーマーケットや飲食店でも目にする機会が増えています。味だけでなく、栄養価の高さや使い勝手のよさにも注目が集まり、北海道から九州まで35道府県の学校給食にも採用されています。

タモギタケの人工栽培は、バイオ技術を駆使した先進システムによって可能となりました。北海道のカラマツのオガクズをベースとしたキノコ培地を培養瓶にしてから殺菌した後、厳しく管理された無菌環境のもと、自動制御ロボットで「エルムマッシュ291」という種菌を接種すると、黄色の傘の株が培養瓶からあふれ出すように現れてきます。成長するまでの約20日間、生育に最適な空調管理を徹底しながら栽培されているのです。

vkrYE5IsYe1DhWF1484011978.jpg

タモギタケの人工栽培システムの運用が軌道に乗りはじめてからは、北海道の産官学で健康の維持・増進に対する働きについても盛んに研究されるようになりました。私も、タモギタケの健康パワーに魅了された研究者の一人です。タモギタケには、「β‐(1‐3)‐D‐グルカン」という成分が豊富に含まれていることがわかっています。βグルカンという多糖類の一種で、すぐに〝免疫力アップ〟を連想する方も少なくないでしょう。ほかにも、体内で合成できない必須アミノ酸を含む20種類以上のアミノ酸、ビタミンB1、B2、天然ミネラルなどがバランスよく豊富に含まれています。

タモギタケは札幌医科大学のほか、北海道大学でも産学共同ネットワークによって研究されてきました。これまでに報告されたタモギタケの機能性としては、「抗腫瘍作用」「抗酸化作用」「血圧降下作用」「血糖値上昇抑制作用」のほか、「セラミドによる皮膚保湿作用」「抗アレルギー作用」などが挙げられます。実際に私も、2005年4月に開かれた第96回アメリカ学会総会で「タモギエキスによる抑制性T細胞の制御・新規抗腫瘍効果について」と題した発表を行っています。ガンを移植したマウスを用いた実験で、タモギタケの濃縮エキスによるガン細胞の増殖抑制効果とマウスの生存期間の延長効果を明らかにしたのです。ほかのキノコでは報告された前例のない、タモギタケ独自の免疫増強作用のしくみまで解明した点が評価され、海外の研究者からも高い評価を得ました。

一方、北海道大学で行われた人間の子宮頸ガン細胞を用いた抗腫瘍実験では、タモギタケの濃縮エキスを投与したところ、48時間以内にガン細胞の死滅が確認されています。2012年には、タモギタケの濃縮エキスの抗菌作用が報告されました。「エルゴチオネイン」という抗酸化作用の強いアミノ酸が、抗菌作用のある「アルファディフェンシン」という物質の分泌を小腸で促すと解明されたのです。抗生物質とは異なる作用で有害な腸内細菌に対する抵抗力を高められると、大きな注目を集めています。

加藤和則先生(東洋大学教授)

Back