毎日小さじ1杯でOK!抗炎症作用抜群のタマネギの皮はガン予防に最適
ガンをはじめ、私たちの体に重大な病気を引き起こす原因として「炎症」が挙げられます。炎症は私たちの体で起こっている防御作用の一つで、生きていくためには欠かせない反応です。ハチや蚊に刺されて腫れたり、ウイルスに感染して熱が出たり、傷口が細菌に感染して膿んだりするのは、すべて炎症反応です。炎症は外部から侵入した病原菌や異物などを排除するために、免疫細胞が必死に闘っている証拠といえます。
炎症は私たちの体を守るために欠かせない反応ですが、ウイルスや病原菌を排除するさい、必要以上の反応をしてしまう場合があります。過剰な炎症が起こると、正常な細胞や組織も攻撃することがあります。私たちの体を守るはずの反応が、逆に体を傷つけてしまうのです。過剰な炎症がくり返されると細胞や組織が傷つけられ、さまざまな病気の原因になります。
例えば喫煙は、呼吸器に酸化ストレスを与えることで炎症を引き起こし、遺伝子の変異を招きます。炎症によって出動した免疫細胞、特に寿命の短い好中球という白血球が細胞や組織を傷つけることで慢性的な炎症が起こります。日本人に増えている肥満も炎症を起こす原因です。「肥満で炎症?」と思われるかもしれませんが、脂肪から生じる脂肪酸が炎症を起こすマクロファージ(大食細胞)を活性化します。肥満は一過性の現象ではないので、体の中では慢性的な炎症が起こっているのです。
慢性的に炎症が起こっている状態(慢性炎症)は、さまざまな病気を引き起こします。具体的には、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病、動脈硬化によって起こる心臓や脳の病気、関節リウマチや炎症性腸疾患などの自己免疫疾患、アルツハイマー病やパーキンソン病などです。ガンの発生や転移にも慢性炎症が大きくかかわっています。
ガンを引き起こす原因の一つに、細胞の遺伝子が傷ついて起こる突然変異があります。通常、傷ついた遺伝子は修復されます。修復されずに細胞が増殖すると変異が拡大し、さらに炎症による遺伝子の変異がくり返されると、ガン細胞が生まれやすくなるのです。
ガンをはじめ、さまざまな病気の原因になる慢性的な炎症は、毎日の食事によって防ぐことができます。例えば、肉食が多いと腸内は悪玉菌が多い状態になりますが、野菜や果物を多く食べることによって、腸内環境が改善されることがわかってきています。
野菜や果物に含まれるポリフェノールは色素や渋み、苦み、辛みなどの成分です。ポリフェノールはフラボノイド系とフェノール系の2つに分類でき、ポリフェノールの90%はフラボノイド系です。フラボノイドは、7000〜8000種類もあるといわれています。よく知られているのは、ブドウの皮などに含まれるアントシアニン、ミカンの皮に豊富なへスぺリジン、緑茶に含まれるカテキンなどです。野菜や果物の皮に多く含まれるフラボノイドに抗酸化作用のあることはよく知られていますが、強い抗炎症作用も持っています。フラボノイドの中でも特に強い抗炎症作用を発揮するのは、タマネギの皮などに含まれるケルセチンという物質です。ケルセチンには、過剰な炎症を抑える働きがあります。
たんぱく質の一種である炎症性サイトカインは、外敵の侵入をほかの免疫細胞に伝える役目を持っており、その一つにTNF‐αがあります。かつてTNF‐αは腫瘍壊死因子として、ガン細胞を殺す働きがあると考えられていましたが、その後の研究によって、炎症を引き起こす悪玉サイトカインであることがわかりました。ガンを防ぐには、必要以上にTNF‐αを作らないことが大切です。タマネギの皮に含まれるケルセチンを毎日摂取することで、持続的に炎症が起こることを抑えられ、がんをできにくくするのです。
ケルセチンを毎日約50㍉㌘とったところ、動脈硬化が予防できたという研究があります。50㍉㌘のケルセチンをタマネギの皮でとる場合、わずか小さじ一杯分(約5㌘)の量です。タマネギの皮はミキサーにかけて粉末にすると、とりやすくなります。皮を料理用のネットに入れてお湯で煮出し、スープなどに混ぜてとってもかまいません。私はタマネギの皮の粉末を焼酎に入れて作る「焼酎のタマネギ皮割り」をよく飲んでいます。タマネギによって含まれるケルセチンの量は異なります。タマネギは安全性が確認されているものを選ぶといいでしょう。
熊沢義雄先生(元北里大学理学部教授)