平兵衛さんが見つけた日向市のヘベスは料理の隠し味に最適で体にもとても優しかった
柑橘類には健康の維持・増進に役立つさまざまな機能性があることが、多くの研究によって明らかにされています。あなたは、"ヘベス"という果物をご存じですか。ヘベスは宮崎県日向市特産の柑橘類です。独特の香りと風味があり、種が少なくて果汁が多いという特徴があります。ヘベスという名前は、平兵衛さんという人物が発見し、栽培を始めたことに由来しています。「料理の隠し味として使うと嫁の株が上がる」といわれ、地元では娘を嫁がせるとき、ヘベスの苗木を持たせることが慣習になったそうです。
ヘベスの魅力を伝えるために、日向市では生産者、消費者、農協、商工業者、宮崎県、日向市の担当者による「日向のへべす消費拡大プロジェクト」を推進しています。プロジェクトでは、ヘベスを利用した加工製品の開発や、ヘベスに含まれる機能性成分の分析などが行われています。
果実の10倍の抗酸化パワーを持つ「ブルーベリーの葉」でウイルス病を撃退
2005年にヘベスの機能性研究が始まると、優れた働きがあることが判明しました。その後、宮崎県食品開発センターにおいてヘベスに関する調査・研究が進められていきました。当時、研究に携わっていた宮崎県商工観光労働部の柚木崎千鶴子さんに、ヘベスが持つ機能性成分について解説して頂きました。
「ヘベスには、リモネンという香りの成分が多く含まれています。リモネンには脳を癒やす働きがあるといわれています。クエン酸の量も豊富なので、疲労回復にも役立つでしょう」
リモネンには脳をリラックスさせる効果のみならず、睡眠を促す作用や免疫力を高める働きがあるといわれています。一方、クエン産には疲労回復のほか、血液をきれいにする働きがあり、美肌・アンチエイジング効果も期待できるのです。
「果樹研究所の報告によると、ヘベスにはさまざまなフラボノイドが豊富に含まれていることが明らかになりました。ヘベスと同じように薬味などに使用されるカボスやスダチにはあまり含まれていないナツダイダインはユズの30倍以上、ナリルチンやナリルギンというフラボノイドも、カボスの5倍以上含まれています」
フラボノイドはポリフェノールの一種で、代表的なものにブルーベリーのアントシアニンなどが挙げられます。抗酸化作用や抗ガン作用があるといわれています。
「年間200㌧弱生産されるヘベスのうち、およそ半分が加工のために圧搾されています。残った廃棄物はすべて肥料として活用されていました。柑橘類の皮が健康にいいという研究は多くあったため、私たちはヘベスの果皮の健康効果について宮崎大学農学部と共同で研究しました」
実験は、圧搾したヘベスの皮を混ぜたエサを、ラットに与えて行いました。具体的には、ラットのエサの1%をヘベスの皮にしたグループ、3%をヘベスの皮にしたグループ、ヘベスの皮を与えなかったグループの3つにわけました。
「実験を終えたラットの肝臓を比較してみると、ヘベスの皮をとったグループは中性脂肪とコレステロールの濃度が大きく低下していました。特に中性脂肪に対する結果は大変優れたものでした」
培養細胞を用いた試験では、ヘベスの皮には抗ガン作用があることも確認されました。収穫する時期によって効果が大きく変わることも確認されているようです。
「エタノールで抽出したヘベスの皮のエキスを収穫期ごとに分けてヒト由来の肝ガン細胞に加えたところ、旬の時期である8~10月に収穫されたヘベスは、低い濃度で効果が確認されました」
ヘベスは漢字で「平兵衛酢」と書きます。果汁も果皮もまるごと利用でき、料理の味を引き立てる優れた食材です。最後に、日向市役所の担当者に、ヘベスの皮をおいしく食べられる調理法を教えて頂きました。
「ヘベスの皮を鶏肉といっしょに揚げる"ヘベスの鶏から揚げ"はいかがでしょうか。鶏肉にみじん切りにしたヘベスの皮とコンブ茶粉末を混ぜた後、片栗粉をまぶして揚げたものです。ヘベスの香りがから揚げの味を引き立てる、おすすめの料理です。現在、ヘベスの加工品がたくさん販売されています。健康の維持にもお役立てください」