だしの王様・羅臼昆布の茎から抽出したエキスで髪が若返る、かもしれない
世界自然遺産に登録されている知床半島は、北海道東部に位置します。知床半島の東側沿岸にある羅臼町の名物は、人間の背丈ほどの大きさの羅臼昆布です。別名「オニコンブ」と呼ばれ、だしの王様として重宝されています。
羅臼昆布の魅力をより多くの人に知ってもらおうと立ちあがったのが、食品の開発・製造・販売を行うケミクルという会社です。グルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸が、ほかの昆布の10倍も多く含まれている羅臼昆布。加工するときに廃棄されていた茎を使って、髪の健康に役立つ新たな名物開発に乗り出しました。
髪の主な成分は、たんぱく質。たんぱく質はアミノ酸から作られています。良質なアミノ酸の摂取は、髪だけでなく、頭皮の健康にも欠かせません。近年の研究では、髪や頭皮に塗ることで高い保湿効果が得られることもわかってきました。
羅臼昆布のアミノ酸は、葉よりも茎に多く含まれています。東京海洋大学の久田孝准教授と日本バリアフリーの共同研究によると、羅臼昆布には食物繊維の一種であるアルギン酸も、葉よりも茎に多く含まれることが判明しています。
ハーバー研究所の試験では、羅臼昆布の茎から抽出されたエキスには、毛根にある毛乳頭細胞内部で「インスリン様成長因子(IGF‐1)」を活性化させる働きがあることが報告されています。IGF‐1とは、成長ホルモンによって肝臓などで作られる物質のこと。試験では、IGF‐1が51%も増加することがわかりました。毛乳頭細胞の中で活性化されたIGF‐1は、髪の製造工場である毛母細胞に働きかけて発毛・育毛を促します。
髪は生えてから抜けるまでに、成長期、退行期、休止期というヘアサイクルを辿ります。男性の場合、毛母細胞が活発になる成長期に栄養不足や乾燥が起こると、産毛の状態で髪の成長が止まって抜け落ちてしまいます。IGF‐1は、毛周期の中でも成長期に必要とされる物質です。羅臼昆布の茎抽出エキスは、抜け毛や薄毛改善の切り札となるかもしれません。