B・C型肝炎はインスリン抵抗性増大に注意!血糖値が高くなり肝硬変の危険度も上昇

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ウイルス性肝炎は、体内に侵入した肝炎ウイルスが肝臓で増殖することで起こる病気です。ウイルス性肝炎にはいくつかの種類がありますが、日本で一般に見られるのはA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎の3つです。

B型肝炎とC型肝炎は、主に感染者のウイルスがほかの人に血液などを介して感染します。現在日本では、B型肝炎とC型肝炎の患者さん、および「キャリア」と呼ばれる症状のない持続感染者は、合わせて300万人を超えると推測されています。

B型肝炎とC型肝炎はどちらも慢性肝炎から肝硬変、さらには肝臓ガンに進行しやすいことでも知られています。日本の肝臓ガン患者の75%近くが、C型肝炎ウイルス感染者だという報告もあるほどです。

C型肝炎は、体内でさまざまな異常を引き起こすことがわかっています。一つが、糖をエネルギーとして消費し、余ったら蓄えるしくみである糖代謝の異常です。肝硬変の患者さんの20%以上が糖尿病を合併することは以前から知られていましたが、近年の研究で、同じ肝硬変でもC型肝炎の進行によって生じた肝硬変で、糖尿病の合併率が高いことがわかってきたのです。原因として考えられるのは、C型肝炎ウイルスの感染によるインスリン抵抗性の増大です。

インスリンはホルモンの一種。肝臓の中にブドウ糖をグリコーゲンとして蓄えたり、食後に血液中に増えたブドウ糖を筋肉や脂肪細胞の中に取り込ませてエネルギー源にしたりする働きがあります。インスリンがうまく働かない状態が、インスリン抵抗性。わかりやすくいえば「インスリン疲れ」とでもいうべき状態です。インスリン疲れが増大すれば、当然、高血糖の状態が続きます。この状態が長期に及べば、糖尿病に至ります。また、インスリン疲れは肝硬変への進展を促進すると考えられています。

では、なぜC型肝炎ウイルスの感染で、インスリン疲れが増大するのでしょうか。考えられる原因はいくつかありますが、一つにC型肝炎ウイルスの「コア」と呼ばれるたんぱく質の働きが挙げられます。インスリンが体内で働くさいに発するある種の信号を、C型肝炎ウイルスのコアたんぱく質が阻害すると考えられるのです。ちなみに、B型肝炎ウイルスの感染によってもインスリン疲れが増大する可能性が報告されていますが、詳細はまだはっきりとはわかっていません。

近年、C型肝炎ウイルスのコアたんぱく質が、体内の中性脂肪を増やすこともわかってきました。2007年に京都大学の先生(現・大学医学部教授)らのグループが突き止めたものです。京大グループでは、C型肝炎ウイルス遺伝子を導入した細胞を用いて解析しました。すると、C型肝炎ウイルスのコアたんぱく質の働きによって、細胞の中にある「油滴」という中性脂肪のが増加することがわかったのです。油滴のまわりでC型肝炎ウイルスが増殖することも確認されました。

以前から、C型肝炎の患者さんは肝臓に脂肪がたまりやすいといわれてきましたが、京大グループの報告によって、C型肝炎ウイルスと中性脂肪の深い関係がより明らかになったといえるでしょう。これらの関係は、インスリン疲れとも関連することが予想されています。

私たちが食事によって摂取した炭水化物や脂肪のうち、体内で余ったものは中性脂肪として蓄えられます。中性脂肪が過剰となれば脂肪肝を発症します。試験管の中での観察結果ではありますが、C型肝炎ウイルスと中性脂肪の関係がわかった以上、C型肝炎の患者さんは糖質や脂質の摂取に気を配ったほうがよさそうです。肥満やインスリン疲れは脂肪肝の原因となり、これらはC型肝炎の患者さんの肝臓の状態を悪化させるだけではなく、インターフェロン療法の効果も低下させます。食べすぎをさけ、栄養バランスのよい食事を心がけ、体重管理に努めるべきです。

慢性の肝臓病の患者さんは絶食時間が長いと肝臓に負担がかかり、特に肝硬変の患者さんでは低たんぱく血症が進行します。そのため、肝硬変の患者さんには、絶食時間が長くなるのを防ぐために、夜食がすすめられています。しかし、肝硬変の患者さんは糖質の利用効率が低下するため、糖質のとりすぎには注意が必要で、バリン・ロイシン・イソロイシンからなるアミノ酸の薬などがすすめられています。

これまで、肝硬変の患者さんは動脈硬化(血管の老化)になりにくいといわれてきましたが、前述したようにB型・C型肝炎ウイルスの感染によってインスリン疲れは悪化し、糖尿病になりやすくなります。糖尿病は血管に負担をかけ、動脈硬化のリスクを高めます。ですから、B型・C型肝炎ウイルスによる慢性の肝疾患の患者さんでインスリン疲れなどのある人は、動脈硬化にも、ある程度注意を払っておくべきでしょう。

宇都浩文先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)

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