歯周病・口臭を予防・改善!鹿児島県の特産品"ナタマメ"に注目
まるで鉈のような大きなさやを持つ「ナタマメ」。鹿児島県の大地の恵みを凝縮した植物であるナタマメは、古くから生活に密着した素材として親しまれ、栽培されてきました。
特に、鹿児島市吉田地区から姶良市蒲生町にかけての一帯では、ミネラルを豊富に含む吉田貝層と火山灰土壌という農作物の栽培に適した環境に恵まれ、ナタマメ栽培の中心地として知られています。
鹿児島県産のミネラル豊富な土壌で育てられたナタマメは、30~40㎝、大きいものでは約70㎝にまで成長するといわれています。近年では、ナタマメの持つ機能性が知られるようになり、注目を集めています。
ナタマメの薬効は、古くは16世紀に中国で編纂された薬学書の古典である『本草綱目』に記述があります。胃や腸の働きをよくし、免疫力を高める滋養強壮作用があると書かれています。実際、江戸時代の人々は、ナタマメのさやを漬物にして食べていました。おなかの調子を整える貴重な食材として人気があったそうです。
ナタマメには、膿を出して腫れものを治す排膿作用や抗炎症作用があることも知られています。ほかの豆類にはないナタマメ特有の薬効で、民間療法では歯周病や蓄膿症、痔ろうなどに効果のある「膿取り豆」として珍重されてきました。そのほか、抗菌や血行促進、免疫力の正常化なども認められ、口臭や肌荒れ、花粉症などの改善に役立つといった報告も上がっています。
最近の研究で、ナタマメには「カナバニン」「コンカナバリンA」「ウレアーゼ」という特有の有効成分が含まれ、優れた排膿作用や抗炎症作用をもたらしていることがわかってきました。カナバニンはアミノ酸の一種で、排膿・抗炎症作用に加え、血行を促進する働きがあります。コンカナバリンAはたんぱく質の一種で、免疫機能を正常化する働きがあります。ウレアーゼは尿素をアンモニアと二酸化炭に分解する酵素で、腎臓の負担を軽減する働きが期待できます。
さらに注目すべきなのが、ナタマメに含まれるミネラル成分のバランスのよさです。鉄、カルシウム、亜鉛などのほかに微量の種々のミネラルが含まれています。ミネラルをバランスよく含むナタマメは、人間の身体を構成する約60兆個の細胞の新陳代謝を促し、免疫力の維持や病気の予防・改善などに役立っているのです。
では、ナタマメが持つ歯周病・口臭に関する効果に焦点を絞ってご紹介しましょう。口の中には、腸内と同じようにたくさんの細菌がすみつき、善玉菌や悪玉菌が勢力争いを繰り広げています。悪玉菌の代表格であるジンジバリス菌などが善玉菌より優勢になり、繁殖して起こるのが歯周病です。歯周病は歯垢の中の細菌によって歯肉に炎症を引き起こし、やがては歯を支えている骨を溶かしていく病気のことです。歯ぐきが赤く腫れて出血する歯肉炎と、さらに悪化して骨が減る歯肉炎の二段階に分けられます。
ナタマメの歯周病に対する効果は、岐阜薬科大学や北海道大学の研究によって明らかになりました。ナタマメの有効成分を含む抽出物(以下、ナタマメ抽出物と略す)の抗菌作用や抗炎症作用によって歯周病菌の親玉とされるジンジバリス菌を殺菌する作用が認められたのです。
歯周病の症状の中で、最もわかりやすいものの1つが口臭です。口臭の改善には原因となる歯垢や歯石を取り除くことが大切ですが、悪玉菌の割合を25%以下に抑えることも重要だと考えられています。
歯周病の原因菌を殺菌する働きがあるナタマメ抽出物を用いれば、口臭や歯周病を改善する効果が期待できます。
さまざまな研究から、歯周病は糖尿病や動脈硬化(血管の老化)などの全身疾患を引き起こすリスクを高め、悪化させることがわかってきました。口腔環境の改善は、全身疾患の予防・改善につながります。いまでは、ナタマメのお茶や健康食品なども市販されています。手軽にナタマメをとることができるので、ぜひ歯周病や口臭の予防・改善に役立ててみてください。
村上光太郎先生(崇城大学薬学部特任教授)