家族みんなで外食を楽しみたい!腎臓病でも食べられる感動の地産地消フレンチ料理店に行ってきた[1/2]
旅先で食べられるものがない、食べられるものがないから旅行に行けない。腎臓病の患者さんや家族も、こうした悩みを抱えています。腎臓病が悪化して腎不全になると、たんぱく質、ナトリウム、カリウム、リン、そして水分など、食事制限はとても厳しくなるからです。
制約があるからこそ、学び、知恵を出す。"おいしい腎臓病食"を提供しているのが、茅野市(長野県)にあるオーベルジュ・エスポワールのオーナーシェフ・藤木徳彦さんです。地産地消の仕事人としても知られています。地産地消とは、地元でとれた食材を地元で消費すること。地産地消の仕事人とは、地産地消の知見や経験を豊富に持つ人として農林水産省から認定された料理人をいいます。地産地消の取り組みを推進しながら、消費者の関心を深めるための活動を行っています。生産者を訪ね、自ら厳選した地元食材中心のメニューがレストランに並びます。
「地産地消の仕事人」の紹介(農林水産省HP)
藤木さんが"腎臓病の患者さんが家族と食べられるフレンチ"を考案したきっかけは、2008年から非常勤講師を務めている松本大学健康栄養学科での経験だったといいます。大学では、季節の食材を活かすこと、産地や生産者の気持ちといっしょに食材の背景を伝え、学校給食であれ病院食・介護食であれ、楽しい食事を提供してほしいということなどを伝えています。
大学の授業の一環として、管理栄養士の卵である学生が運営する一日レストランをお披露目する機会がありました。"栄養バランスの調整"と"地産地消"を融合させた管理栄養士としての実践的な仕事の場を提供するのが目的です。当日、ディナーのお客さんを見送るさい、藤木さんはある家族から話しかけられました。
「外食を家族みんなで楽しめたのは久しぶりのことです。主人が腎臓病を患ってから食事の制限が厳しくなり、栄養価の計算ができない外食は不安だったんです。家族で出かけても同じものを食べられない。お互いに気をつかってしまいますから。今日の食事は栄養計算がされていて安心できましたし、食材の説明もていねいにしていただけました。幸せな時間でした」
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それまでフレンチという美食を追及してきた藤木さんは、「食べるものを制限する食事というのを考えたことがなく、衝撃を受けた」と、当時のようすを振り返ります。家族で楽しめる食事――。藤木さんは管理栄養士の資格を持つスタッフとともに、本を読んだり腎臓病専門医や医療関係の会社などを訪ねて回ったりすることになったのです。
腎臓病食をヘルシーな料理の延長線と考えていたという藤木さん。長野県産の野菜を中心にすることもできず、レシピ開発では苦戦したといいます。野菜にはカリウムが含まれているからです(腎臓病食では、茹でこぼしてカリウムを落とすのが一般的)。県外の低カリウム野菜工場の視察にも出向きましたが、採用は見送り。地産地消へのこだわりは譲れないものでした。悪戦苦闘の末に実現した腎臓病対応フレンチ。口コミで広がり、腎臓病の患者さんを家族に持つお客さんは増えているそうです。
腎臓病対応フレンチ開発の経緯を伺った後、私たちは厨房に案内されました。実際に調理しながら、仕込みや味つけの工夫・知恵を教えてもらえることになったのです(食材の産地情報だけでなく、調理しているところまで開示していただけたことに驚きました)。
この時期(4月11日取材時)はレモングラスというハーブが採れるんですよ。近所のおばあちゃんから分けてもらっています――次回は、季節の恵みを使ったメニューやお客さんの声などをご紹介します。
家族みんなで外食を楽しみたい!腎臓病でも食べられる感動の地産地消フレンチ料理店に行ってきた[2/2]
〒391-0301 長野県茅野市北山蓼科中央高原
Tel & Fax:0266-67-4250
E-mail:espoir○po23.lcv.ne.jp(○を@に変えてください)
※患者さんごとにステージや病状が異なるため、低たんぱく食事メニュー(腎臓病食)は事前の予約が必要です。体調や食事制限の内容について、事前に電話で打ち合わせしています
※オーベルジュ・エスポワールは宿泊可能(3部屋)。腎臓病の患者さんを持つ家族が旅行するときの拠点としても喜ばれています
(取材:若林沙織)