薄毛の原因はAGEかも?腸内環境を整えて"毛髪力"を育みましょう
私は「腸内環境を整えることで薄毛の予防・改善ができる」と考えています。頭皮も髪も人体の1つです。腸を元気にすることで、体の一部である頭皮も元気を取り戻すことができるのです。
腸内環境を整え、腸内細菌が元気に活動すると、体や心までも健康になります。それを証明しているのが、現在の私です。55歳当時、私は薄毛が進行しツルツルの頭になりかけたことがありました。しかし77歳の現在、頭はフサフサの髪で覆われています。特殊な育毛剤を使っているわけではありません。いくつかの生活習慣を見直すことで、再び"毛髪力"を取り戻すことができたのです。
最初に取り組んだのが「糖質制限食」でした。私は63歳で糖尿病と診断され、食事療法でカロリーを制限することになりました。当時の私は1日の摂取カロリーは守っても、大好きな白米やラーメン、パンを食べ続けていたのです。腸内環境も悪かったに違いありません。
医師から指示されたように食事からカロリーを制限しても、糖尿病が改善することはありませんでした。そこで私は、カロリーではなく糖質を制限してみたらどうだろうと考え、実践してみたのです。糖質制限の食事を開始したのは、2010年8月のことでした。その結果、わずか2週間で空腹時血糖値(基準値は60~109㎎、126㎎以上は糖尿病)が90㎎まで低下。さらに中性脂肪値も低下し、HDLコレステロール値が改善しました。体重は10㎏減り、何よりも髪に元気が戻ってきたのです。
AGE(終末糖化産物)という物質をご存じでしょうか。AGEは、糖とたんぱく質が結合する「糖化」によってできる悪玉物質です。AGEは老化を引き起こす物質として危険視されるようになってきました。AGEが体のあちこちに蓄積すると、その部位の老化が著しく進み、肌のハリがなくなったり、シミが出たりする"スローミイラ現象"が起こります。薄毛も老化現象の1つですから、頭皮がスローミイラ化してしまったために、毛髪力が失われてしまうのです。毛髪力を取り戻すには、糖化の原因になる物質を制限することが第一歩です。
まずは、白米や小麦粉、砂糖などの白い食品を控えるようにしましょう。例えば玄米には、腸内環境を整える食物繊維やビタミン類など豊富な栄養素が含まれています。しかし精米すると、体によって有益な栄養素がこそぎ落されてしまうのです。
食物繊維細菌のエサとなる栄養素ですが、精白された食品には食物繊維がほとんど含まれていません。また、食物繊維を持たない糖質は腸内で速やかに吸収されてしまうため、血糖値の上昇にもつながってしまうのです。
AGEと並んで薄毛の原因になるのが活性酸素(酸化作用の強い酸素)です。糖化は体の「コゲつき」、活性酸素による酸化は「サビつき」になります。最近の研究によって、腸内細菌が抗酸化力を発揮することがわかってきました。腸内細菌が強力な抗酸化力を持つ水素を発生させ、体内で過剰に発生した活性酸素を消してくれるのです。
腸内細菌とひとくちにいっても、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに大別されます。水素を発生させるのは、日和見菌の1種である「バクテロイデス門」という細菌ではないかと考えられています。バクテロイデス門の細菌は、エサとなる食物繊維が豊富にあるときに繁殖力を高めて数を増やし、善玉菌に味方します。
善玉菌に味方するバクテロイデス門の細菌を元気にするためにも、糖質を控え、食物繊維をたくさん摂取することが必要です。「ワカメを食べると髪が増える」といわれていますが、海藻類には食物繊維が豊富に含まれています。しかも、海藻類に含まれているのは、腸内細菌の大好物である水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は水に溶けて、ネバネバのゲル状(ゼリー状)になります。海藻類のようなネバネバの水溶性食物繊維は、薄毛に悩む人にとって毛髪力を育む食材になります。
藤田絋一郎先生(東京医科歯科大学名誉教授)