紫外線が傷つけるのは肌だけじゃない!目の免疫力低下で起こる眼病にも要注意!
人間が外界からの情報を得るために最も頼っている器官が「目」です。外界からの情報量の8割以上を視覚から得ていると考えられています。生活をするうえでとても重要な目ですが、実は病気になっても気づきにくい器官でもあります。特に、緑内障や加齢黄斑変性(以下、黄斑変性と略す)といった失明にもつながる目の病気は、自覚症状が出てきたときには、悪鬼まで進行していることも珍しくありません。
緑内障は、日本人で最も多い中途失明原因です。視神経が傷つけられることによって視野の一部が欠け、進行すると徐々に欠けた部分が広がっていきます。緑内障は眼圧が何らかの原因によって上昇し、視神経が圧迫されることで引き起こされる考えられています。
一方、黄斑変性はものを見るときに重要な働きをする網膜の中心にある黄斑部が、紫外線や加齢などの影響で障害を起こすことによって発症します。黄斑変性になると、ものがゆがんで見えたり、視野の中心が暗く見えたりするようになります。
緑内障や黄斑変性が起こっても、見えない部分や異常に見える部分を脳が周囲の像の情報をもとに補ってしまいます。そのため、実際には見えていないのに、見えていると勘違いして症状に気付かないことが多いのです。
緑内障や黄斑変性が発症する原因の1つに、目の免疫力低下が挙げられます。免疫力は体にとっての異物を撃退する力のことですが、大切な視覚を守るためにも欠かせないものです。目の免疫力が正しく働いていないと、活性酸素(酸化作用の強い酸素)など、目の健康に悪影響を与える要素に対抗できなくなります。
活性酸素は、ウイルスなどの外敵を撃退してくれる一方、必要以上に増えると正常な細胞を攻撃したり、動脈硬化(血管の老化)を促進して血管にダメージを与えたりします。当然、目の毛細血管にも悪影響を及ぼして血流を悪化させるため、十分な栄養や酸素が目の細胞に行き渡らなくなってしまいます。
目の免疫機能を正しく働かせることは、活性酸素の害から目を守るために欠かせません。しかし、過度な紫外線や加齢によって免疫機能がうまく働かなくなると、活性酸素の害から目を守ることができなくなるのです。
特に加齢によって目の細胞や血管にダメージが蓄積されると、免疫機能だけでは過剰な活性酸素を防御しきれなくなります。さらに、疲労やストレス、病気などで体の免疫機能が低下していると、目の免疫機能も低下してしまいます。その結果、緑内障や黄斑変性を引き起こすと考えられています。
緑内障や黄斑変性を防ぐ対策として大切なのは、活性酸素を作り出さないことです。特に今の夏の時期は強い紫外線によって目に活性酸素が大量に生じやすいため、注意が必要です。曇りの日でも快晴時の60%、雨が降っていても20~30%と、晴れていなくても紫外線は届いています。外出するときは、つばの深い帽子をかぶったり、UVカット機能のあるサングラスをかけたりして目を守るようにしましょう。
目の健康を維持するためには食生活の見直しも重要です。肉などの動物性食品に偏った食生活を続けていると、血液がドロドロになり、緑内障や黄斑変性の発症や悪化を招きます。さらに、高脂肪食は黄斑変性を発症させる危険性を高めることもわかっています。
一方で、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)、α-リノレン酸などのオメガ3系の脂肪酸を摂取すると、血液がサラサラになります。すでに緑内障や黄斑変性を発症していても、症状の悪化を食い止めることが十分期待できます。オメガ3系の脂肪酸はサンマやサバなどの青魚のほか、アマニ油やエゴマ油などにも豊富に含まれています。また、緑黄色野菜にはポリフェノール(植物色素)などの抗酸化物質が豊富に含まれており、活性酸素の害を防ぐ働きがあります。
そのほか、喫煙や過度なストレスも活性酸素を生み出す原因になります。疲れがたまる夏は免疫力が低下しやすい季節です。禁煙をする、ストレスをためない生活を心がけるなど、目の免疫力を正常に保ち、活性酸素の害から大切な目を守りましょう。
(平松 類先生/彩の国東大宮メディカルセンター眼科医長)