急増する慢性腎臓病の最大原因は高血糖が原因でできる終末糖化産物・AGEだった

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腎臓の最も重要な働きは、血液から老廃物をろ過して、尿とともに体外へ排泄することです。腎臓に流れ込んだ血液は、腎臓内部にある糸球体という組織でろ過されます。糸球体の機能がなんらかの原因で衰えてくると、腎臓の働きは低下してしまいます。慢性的に腎機能が低下して適切な治療を必要とする状態が慢性腎臓病(CKD)です。慢性腎臓病を放置すると、腎機能はどんどん低下して血液中の老廃物を取り除けなくなります。腎臓が機能しなくなる腎不全になると、人工透析か腎移植を受けなければなりません。腎移植を受けると健康な人に近い生活ができますが、日本では腎臓の提供数が少なく、自分のおなかの膜をろ過装置として使ったり、機械に血液を通してろ過したりする人工透析が圧倒的に多いのが現状です。

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慢性腎臓病の原因としては、細菌感染や膠原病などの免疫異常による糸球体の炎症、高血圧が長く続くことによる糸球体の硬化などがあります。高血圧になると、腎臓にも血液が圧力の高い状態で流れ込み、糸球体の毛細血管に大きな負担がかかるため、腎機能が徐々に低下していくのです。腎機能を悪化させる原因として、さらに危険なのが高血糖です。高血糖は、慢性腎臓病の最大原因と考えられるようになりました。

食事をすると血液中にブドウ糖の量が増え、血糖値が上がります。血糖値が上昇すると、血糖値を適正に保つため膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。健康な人の場合は、食事をした後、すぐにインスリンが分泌されます。そのおかげで、食後に血糖値が一時的に上がっても、短時間で下がり、正常な状態に戻ります。ところが、インスリンが分泌されるまでに時間がかかったり、分泌量が少なかったり、分泌量は十分でも効き方が弱かったりすると、食後に上昇した血糖値がなかなか下がらず、高血糖の状態が持続してしますのです。人間の体の細胞や組織は、ほとんどがコラーゲンなどのたんぱく質で構成されています。特にコラーゲンは人体のたんぱく質の約30%を占め、血管壁や皮膚もコラーゲンが主な成分です。コラーゲン繊維は規則的な網目状になっており、お互いに橋をかけたように結びついています。さらにエラスチンというたんぱく質が網目のすきまを埋めて、組織に弾力性を与えています。

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血糖値が上昇した状態が続くと、コラーゲンなどのたんぱく質に、血液中にあふれた糖が結びつくようになります。すると、その一部は、アマドリ化合物(変性した糖)という物質に代わります。アマドリ化合物がさらに糖との結合(糖化反応)をくり返すと、「終末糖化産物(AGE)」という悪玉の糖毒物質が作られてしまうのです。AGEになった糖とたんぱく質の結びつきは非常に強固で、分解したり、体外に排出したりすることが難しくなります。そのため、AGEが一度でも体内で作られると、少しずつ蓄積されていきます。AGEは体の組織を構成するたんぱく質を糖まみれにして機能を奪ったり、受容体に結合して炎症を起こしたりします。特に腎臓の毛細血管など、細い血管ほどAGEの影響を受けやすいのです。

血液をろ過して尿のもとを作り出す腎器です。腎臓に流れ込む血液は、毛細血管の塊である糸球体を通過しながら、ろ過されます。過剰に増えた糖が腎臓の糸球体に入ってAGEが作られると、血管の内側の細胞が傷つけられます。

体内にAGEが蓄積される状態が絶え間なくくり返されれば、糸球体の毛細血管は動脈硬化を起こし、基底膜という尿をこすフィルターの役割を果たしている膜の部分も厚く硬くなっていきます。その結果、しだいに腎臓のろ過機能が低下し、やがては慢性腎臓病へと移行していくのです。さらに、腎臓で排除しきれなかった老廃物や毒素が体内にたまった結果、尿毒症となり、さまざまな合併症を引き起こす原因になります。慢性腎臓病の発症や悪化には、AGEが深くかかわっています。体内にAGEを増やしてしまう食後血糖値には要注意です。

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AGEは、体内で作られるばかりではなく、私たちの暮らしの中のさまざまな食品にも含まれています。肉や魚を焼いたり揚げたりするときにできる焼きめや焦げには、大量のAGEが含まれています。体内に入るとAGEに変質しやすい糖(フルクトース、コーンシロップなど)が使われている清涼飲料水も注意が必要です。飲食物に含まれるAGEを摂取すると、約1割は腸から吸収され、そのうちの3分の2が体内に蓄積されます。腎機能を低下させないためには、血糖値のコントロールに努めるとともに、AGEを含む飲食物をとりすぎないようにすることが大切です。ふだんからの食生活を見直して、高血糖の状態にならないようにしましょう。

山岸昌一先生(久留米大学医学部教授)

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