目の老化の原因はAGE?目尻のシワは要チェック!

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糖やたんぱく質は、私たちが生きていくうえで欠かすことのできない重要な栄養素です。糖は活動のためのエネルギーとして使われ、たんぱく質は体の組織を作る材料として使われます。ところが、体内に糖が多くなりすぎるとたんぱく質と結合して"糖化"という化学反応が起こります。結合した糖とたんぱく質は変性をくり返すことで、最終的に「AGE(終末糖化産物)」という有害物質になります。AGEは、魚・肉の焼け焦げた部分や清涼飲料水などにも含まれています。食品から摂取したAGEの約7%は体内に蓄積するといわれています。AGEは体の各器官に、機能低下や障害を起こさせる原因になります。例えば、AGEが血管のコラーゲン(繊維状のたんぱく質)に付着すると、血管の弾力性を保つコラーゲン架橋という骨組みがもろくなります。その結果、動脈硬化の進行が速まり、血管は古びたゴムホースのように弾力性を失って、硬くなったりもろくなったりします。

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目も例外ではありません。実は、目の老化にはAGEが深くかかわっているのです。眼球の表面を覆っている角膜にAGEが付着すると、滑らかさが失われて凸凹が生じます。角膜は通常、涙の膜によって保護されています。AGEが付着すると涙が途中でせき止められ、均一な膜ができなくなります。涙が途切れた部分は細菌やゴミが付着したり、紫外線の直撃を受けやすくなったりして、角膜が傷つく原因となります。

紫外線は、強い酸化力を持つ活性酸素を発生させる引き金にもなります。活性酸素は、バイ菌を殺す力があるほど強力で人体に必要な酸素ですが、過剰に発生すると、体内の組織を酸化して老化を進行させてしまうのです。AGEによる糖化は40代から始まっているのですが、角膜が損傷されやすくなるのは、涙の量が減る60代からです。

慶応義塾大学医学部眼科の坪田一男教授が涙の量を調べたところ、加齢によって分泌量が減少することが確かめられました。また、眼球の奥にある網膜にAGEが付着すると、網膜の神経や周囲の細胞が糖化され、目の調整機能が急激に衰えます。年を取ると誰でも涙の量が減って角膜が傷つきやすくなりますが、網膜の損傷は高血糖の人に多く起こります。糖尿病やその予備軍で、糖が血液中にだぶついていると、それだけAGEがたくさん作られるためです。高血糖の状態が続くと、AGEに冒された部分に血管が作られるという研究論文が発表されています。大量のAGEによって劣化した血管を補うために、血液のう回路として新たに血管ができるのです。急ごしらえの新生血管は非常にもろく、少し圧力がかかっただけで破れてしまいます。網膜の新生血管から出血すれば、視力の低下を招きます。

老眼にも糖化が関係しています。糖化で水晶体や毛様体筋などが硬くなることが要因です。水晶体は糖化の影響を受けやすい器官で、紫外線による影響が加わったり、疲れ目が増したりすると、老眼は進行します。白内障の発症にもAGEがかかわっているという報告もあります。白内障は目の水晶体が白く濁って視力が著しく低下する病気です。水晶体はカメラでいえばレンズにあたる器官です。水晶体に含まれるたんぱく質が酸化して白く濁ることは以前から知られていましたが、最近になってAGEも水晶体を劣化させる原因になることがわかってきたのです。

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また高血糖は、腎臓も弱らせます。腎機能が低下すると血液の浄化機能が衰え、AGEが尿として排泄されにくくなって体内にたまっていきます。蓄積したAGEは腎臓の毛細血管を傷めつけるので、体内にAGEがますます増加するという悪循環に陥ってしまうのです。肝臓や腎臓は、障害がよほど悪化しなければ症状が現れないため、沈黙の臓器と呼ばれています。それ以上に我慢強いのが目で、加齢やAGEの影響を受けやすい器官でありながら、異常を訴える信号をなかなか発しません。

目の老化を知るには眼科を定期的に受診するのがいちばんですが、実は顔の小ジワも一つの基準になります。私たちの研究グループは40代前半~50代前半の女性50人を対象に、特殊な機械を使って、目尻と口角(唇の端)のわきの小ジワを調べてみました。肌の劣化には紫外線がかかわっていますが、目尻と口角は紫外線の影響が少ない場所だからです。深くて長い大きなシワは、筋肉の劣化によるところが大きいので検査対象から外しました。その結果、血液中のAGE濃度が高かった人は小ジワが多く、肌がくすんでいることから確かめられました。血液中にたくさん存在するAGEが皮膚に運ばれ、ハリを保つコラーゲン架橋を崩壊させたことが、小ジワの増加につながっているのではないかと、私は考えています。鏡を見て、目尻や口角のわきに小ジワが増えていたら、糖化が進んでAGEが蓄積していることが疑われます。小ジワやドライアイが気になるという人、特に60代以上の人は、眼科で検査を受けることをおすすめします。

井上浩義先生(慶應義塾大学医学部科学教室教授)

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