スイカに美肌作用があった?奈良県で栽培されている"カラハリスイカ"の秘密

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スイカというと、緑に黒のギザギザ模様の皮に包まれ、甘くてみずみずしい赤い果肉の果物を思い浮かべる人が多いと思います。世界にはさまざまな種類のスイカが存在していて、見た目や味は多種多様です。カラハリスイカも、日本ではふだん目にすることが少ないスイカの一つです。

カラハリスイカが自生しているのは、アフリカの「カラハリ砂漠」です。カラハリ砂漠には400種類のスイカが自生しているといわれ、砂漠の環境に適応するよう進化しています。カラハリスイカの1種は、大量の水分を含んでいるため、古くから珍重されてきました。砂漠で暮らす人々からは、「砂漠の水がめ」と呼ばれて親しまれてきたのです。

カラハリスイカは、ウリやトウガンに似た長円形で、大きさは20~25㎝程度。熟しても、赤くも、甘くもならず、お世辞にもおいしいとはいえません。カラハリスイカの注目すべき点は、味ではなく、その保湿性です。

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カラハリスイカの機能性に注目して研究に携わっている、奈良先端科学技術大学院大学名誉教授の横田明穂先生にお話しを伺いました。

「私は、10年以上前からカラハリスイカに注目していました。研究を進めるうちに、カラハリスイカに含まれる成分が美容や健康に効果あることがわかってきたのです」

植物は光合成をするときに水が必要で、不足すると光合成がうまくできなくなります。光合成がうまくいかなくなると、有毒な酸素である活性酸素が生じますカラハリスイカの果実は、活性酸素を除去する抗酸化成分を豊富に含んでいます。

「有効成分の1つは、アミノ酸の1種であるシトルリンです。シトルリンは、活性酸素の中でも最も毒性の強いヒドロキルラジカルを除去する働きがあります。興味深いことに、実験ではシトルリン単独の場合と比べて、同濃度のシトルリンを含むカラハリスイカ抽出液の抗酸化活性のほうが極めて高いことがわかりました」

カラハリスイカにはシトルリン以外の抗酸化物質も含まれていると考えられています。活性酸素は体内で過剰に増えると、シミやシワの原因になります。抗酸化作用が強いカラハリスイカ抽出液は、活性酸素を除去し、シミやシワの予防に期待されています。

「カラハリスイカ抽出液は皮膚の細胞を増やすこともわかっています。肌の弾力やハリの維持に必要な線維芽細胞や、皮膚の再生に関与する表皮角化細胞にカラハリスイカ抽出液を加えて培養したところ、いずれも増殖が促進されたのです」

線維芽細胞が増殖することで、シワの発生やハリの低下を抑えることができます。表皮角化細胞が増殖して皮膚細胞の生まれ変わりが促進されれば、健康的な肌を維持できるのです。

私たちの肌では、紫外線に当たるとメラニン色素が生成されます。メラニン色素の過剰な産生がシミやクスミの大きな原因だと考えられています。

「研究の結果、カラハリスイカ抽出液がメラニン色素の産生を抑制することが判明しました。カラハリスイカにはメラニン色素の産生に伴うシミやクスミの発生を防ぐ働きも期待できます」

さまざまな機能性を持つカラハリスイカは、日本でも栽培されています。奈良先端科学技術大学院大学のベンチャー企業が奈良県の農家に栽培を依頼。増加傾向にあり、問題となっていた遊休農地を活用して生産を始めました。奈良県で生産されたカラハリスイカは、化粧品として活用されています。現在も研究が進んでおり、新たな機能性の発見が期待されています。今後も美容・健康に役立つ果物として、カラハリスイカはさらに広く普及していくでしょう。 

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