ドキドキ・ワクワクで認知症は予防できる!料理と旅行は健康脳への近道です

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年齢を重ねるにつれ、若いときよりも頭が働かなくなってきたと感じている人は多いのではないでしょうか。加齢によって脳の機能は落ちていくものと、あたりまえのように思っている人は少なくありません。一方で、高齢になっても衰え知らずの脳でいる人が存在することも、さまざまな研究で確かめられています。

脳の若さを維持するためのカギを握るのが「海馬」です。海馬は記憶と深く関係している脳の器官で、記憶に関するすべての働きにかかわっています。そのほか、情動やストレスへの反応といった重要な役割も果たしています。脳の重大な機能を担う海馬の神経細胞は、何歳になっても新生すると米国の研究で確かめられています。

嚥下反射が改善して誤嚥による肺炎を退ける黒コショウのアロマ

認知症の患者さんの半分以上を占めるアルツハイマー病の発症は、海馬の萎縮から始まります。その後、思考・判断などの高次機能をつかさどるの萎縮へとつながっていきます。海馬と前頭葉は、健康な脳を保つための重要な役割を持つ部分といってもいいでしょう。

健康な脳を維持して認知症を防ぐ方法は、日常生活の中にいくつもあります。しかも、それらの活動には医学的な根拠があることも確認されているのです。脳を健康に保ち、若返らせることもできるポイントは以下の3点です。

 ● 有酸素運動をする

海馬を元気にする最良の方法が運動です。運動といってもきつい筋力トレーニングやスポーツ、激しい運動をする必要はありません。脳の健康を維持するためには、1日30分程度の有酸素運動で十分です。

有酸素運動とは、呼吸で酸素を取り入れながら行う運動で、散歩やウォーキング、ジョギング、水泳、ヨガ、エアロビクスなどがあります。有酸素運動は、心肺機能を高めるだけではありません。脳への血流を増やすため、脳内の神経細胞に酸素を届け、認知症のリスクにつながる動脈硬化(血管の老化)を防ぎます。有酸素運動は免疫力も高めるので、遺伝子を傷つける活性酸素(酸化作用の強い酸素)も体外へ排出されます。

 ● 趣味や好奇心を持つ

楽しいことをして、ワクワク・ドキドキすることは、脳にいい刺激を与えます。私たちの研究グループが、約400人の脳の変化を8年間にわたって追跡調査した結果、知的好奇心を持っている人ほど脳の萎縮するスピードが抑えられました。

趣味を心から楽しめる人は、知的好奇心が尽きることはありません。現在、趣味を持っていない人は、昔行っていたことやあこがれていたこと、友人がしている趣味を試してみるといいでしょう。趣味は気軽に継続できることが大切です。

 ● 社会とのかかわりやコミュニケーションを持つ

社会とつながり、人とコミュニケーションを持つことは、脳を活発に刺激するため認知症の予防に効果的です。例えば「誰かと会話をする」「集団で活動する」「人と食事をする」とき、脳の中では、言語機能・感性・社会性など、さまざまな領域が働いています。

認知症予防につながる行動として私がおすすめしているのが「料理」です。実生活に密接している料理は趣味として楽しむこともできます。料理によって脳が鍛えられるのは、献立を考えることから盛りつけるところまで、常に計画が必要になるからです。

料理は「何を食べよう」「何を作ろう」と考えることから始まります。献立が決まったら冷蔵庫の中を確認し、買い物に行くかを判断します。材料がそろったら料理を作る順番や段取りを考えます。包丁で切ったり、鍋をゆすったりして料理を作ったら、どの器にどのように盛りつけるかを考えます。

こうしてみると、「考える」「決める」作業の連続であることがわかります。できあがった料理を誰かといっしょに話しながら食べることは楽しいものです。作った料理をおいしいと喜んでもらえれば、脳はさらに刺激を受けて健康になります。

料理以外でおすすめしていることは「旅行」です。日常と異なる環境で過ごす旅行は、新しい刺激や感動にあふれています。五感をすべて活用する旅行は、脳を最高に活性化させる行動なのです。

旅行中は見たい歴史的建造物や食べてみたい郷土料理などによって知的好奇心が刺激されます。観光名所を歩いて回ることで、楽しみながら有酸素運動をすることができます。現地の人とふれあったり、旅の同伴者と感動を共有したりすることで、社会とのかかわりやコミュニケーションも深まるのです。

脳を鍛えることに年齢は関係ありません。料理や旅行に限らず、自分の好きなことを継続すれば、自然と健康な脳に近づいていくといえるでしょう。

瀧 靖之先生(東北大学加齢医学研究所教授)

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