国産のカイコ冬虫夏草に認知症予防効果があるかもしれないと医科大学も注目!

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私は現在、カイコのサナギに冬虫夏草の一種であるハナサキダケの胞子を寄生させてできたカイコ冬虫夏草を研究しています。冬虫夏草はコウモリガ科(蛾の1種)の幼虫に寄生して育つ菌類のことです。老化予防、性欲増進などに役立つと古くから重宝されていました。近年では抗がん作用が注目され、高値で取引されています。

冬虫夏草の産地であるチベットでは、乱獲のために環境破壊が起こっています。日本にはレアプラント(希少植物)として輸入され、高価な健康食品として流通しています。私は原産地が確かで、環境に優しい日本産の冬虫夏草をいつか研究してみたいと考えていました。

福島県に工場がある東白農産企業組合(本社・岩手県)から「福島県産冬虫夏草の新しい付加価値を見つけてほしい」と依頼されたのが、カイコ冬虫夏草の研究の始まりです。

20世紀前半、カイコによる生糸産業(養蚕業)は日本の輸出総額の約50%を支えていた1大産業でした。科学技術の面でもカイコを使った研究は、遺伝子学、ホルモン学、ウイルス学の分野でも多くの業績を残しています。

私は日本の産業と科学技術の発展に貢献したカイコから独創的な発見を導き出せないかと考え、カイコ冬虫夏草の研究を進めています。

カイコ冬虫夏草を研究した結果、認知症のマウスの海馬にできた傷を修復する効果が確認できました。

海馬は脳の組織の一部で記憶や空間学習能力をつかさどる役割をしています。海馬にはグリア細胞という、神経伝達物質の受け皿になる細胞が多くあります。グリア細胞に傷がつくと、神経伝達物質を正常に伝えることができなくなります。

私はマウスを使った実験を行ってみました。用意したマウスは、老化したマウスで海馬に傷があるものを選びました。そのマウスにカイコ冬虫夏草を与えたところ海馬の傷がなくなっていることが確認できました。

カイコ冬虫夏草は、国のプロジェクトとして日本学術振興会から2015年度までの期間、研究費を得ることができています。岩手医科大学との共同研究で、認知症の臨床試験も進めていて、医薬品候補の物質としても期待されています。

鈴木幸一先生(岩手大学特任教授・名誉教授)

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