オキアミの油"クリルオイル"に注目!脳まで届くDHAやEPAで頭の回転が速くなる

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オキアミの脂質「クリルオイル」に、肝機能の改善効果が期待できるとわかり、注目を集めています。オキアミとは、見た目がエビのような姿をした甲殻類の一種です。体長は5㎝ほどで、エビやカニとは遠縁の関係にあります。オキアミは、寒い地域の海ならどこにでも生息しています。中でも南極周辺の海面近くに大群を成しており、クジラをはじめ、アザラシ、イカ、海鳥などのエサになっています。南極海に3億トンも生息していると推定されるオキアミは、地球上で、最大級の食材資源といわれています。オキアミから抽出される脂質を「クリルオイル」といいます。近年の研究で、機能性の高い栄養成分を大量に含むことがわかってきました。

クリルオイルや魚類などの脂質には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの「オメガ3系脂肪酸」が豊富に含まれています。DHAやEPAの健康効果については、皆さんも聞いたことがあるでしょう。代表的な働きとして、動脈硬化の予防が挙げられます。抗炎症作用などの働きも報告されています。オメガ3系脂肪酸の中でも、脳機能の改善に有効といわれているのが、DHAです。脳内には140億個もの神経細胞があり、DHAは神経細胞の膜の主成分です。脳全体の脂質のうち、25~30%をDHAが占めています。DHAは神経細胞の成長を促したり、神経伝達物質のやりとりを活発にしたりする働きを持っています。DHAは、血液脳関門通過できる性質を持っています。血液脳関門とは、脳に必要な成分だけを脳内に通す関所のようなものです。脳内に毒素が入り込まないようにする役割があり、ビタミンCやβカロテンなどの栄養素も通過できません。DHAは血液脳関門の通過が可能なため、脳によい影響を与えるのです。

クリルオイルが注目されている理由は、含まれている脂質の40%がリン脂質という点にあります。DHAなどのオメガ3系脂肪酸とリン脂質が結合した状態にあることがクリルオイルの最大の特徴です。魚油のオメガ3系脂肪酸は、リン脂質ではなく、トリグリセリドという物質と結合しています。一方、リン脂質と結合しているクリルオイルのオメガ3系脂肪酸は、トリグリセリドと結合しているものより体内への吸収率が抜群に高まります。腸内では、水に溶けている物質のほうが吸収しやすいといわれています。しかし、オメガ3系脂肪酸は脂質のため、水には溶けにくい物質です。リン脂質と結合ししたクリルオイルのオメガ3系脂肪酸は乳化しやすく、腸内で効率よく吸収されるのです。実際に、脳機能を調べる試験でも、クリルオイルの効果が認められました。

試験では、60~70歳までの健康な男性45人を3つのグループに分け、それぞれクリルオイル、イワシオイル、脳に影響を与えない脂質(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を、1日に2ℊずつ、12週間摂取してもらいました。その後、脳機能を評価する試験を受けてもらい、脳の血流の変化を測定しました。試験の結果、クリルオイルを摂取したグループとイワシオイルを摂取したグループの脳血流が顕著に増加していました。オメガ3系脂肪酸を摂取することで、脳の活動が活性化されたことを示しています。さらに、脳の情報処理能力指標とされているP300と呼ばれる脳波を測定したところ、クリルオイルを摂取したグループだけが好成績を示したのです。P300とは、脳が視覚や聴覚などの刺激に対して300㎜秒後に出す脳波のこと。P300が発生する時間は加齢によって長くなり、年齢を1歳重ねるごとに1.0~1.2㎜秒ずつ長くなります。今回の試験では、クリルオイルを摂取した人たちは、平均すると20㎜秒もP300の発生する時間が短くなっていました。脳の情報処理能力が高まり、頭の回転も速くなることが確かめられたのです。クリルオイルはアスタキサンチンという強力な抗酸化物質も含んでいます。アスタキサンチンも血液脳関門を通過し、脳内の脂質の酸化を防止する働きがあるほか、クリルオイルに含まれるオメガ3系脂肪酸の酸化も防いでくれます。従来の魚油よりもさらに機能性の高さが期待できるクリルオイルは、脳機能の改善に役立つ最適な食材といえるでしょう。

矢澤一良先生(クリルオイル研究会会長)

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