頭痛は4人に1人が悩む国民病!あなたに"頭痛信号"はありませんか
現在、国内における頭痛の患者数は3,000万人前後と推計されています。日本人の4人に1人が頭痛を抱えていることになります。頭痛は「国民病」と呼べるかもしれません。頭痛には、しつこい痛みをくり返す慢性的な頭痛から、クモ膜下出血や脳腫瘍といった深刻な病気を原因とするものまで、さまざまな様態があります。慢性的な頭痛には、①緊張型頭痛、②片頭痛、③群発頭痛の3つの種類があります。
緊張型頭痛は慢性的な頭痛の中で最も多いタイプです。首や肩などの筋肉がこったり、心理的なストレスによって自律神経のバランスが乱れたりすることで起こります。緊張型頭痛になると、頭全体の重苦しさや、圧迫されているような痛みが起こります。片頭痛は脳の血管の異常な拡張と、血管の周辺にある三叉神経の炎症により起こります。通常、片頭痛はこめかみから目のあたりにかけて、片側がズキンズキンと痛みます。痛みの範囲がどんどんと広がって、頭の両側が痛んでくる場合もあります。
私が「頭痛信号」と呼んでいる片頭痛の前兆には、いくつかの種類があります。不安感やイライラした気分が高まったり、普段の肩こりとは明らかに異なる、肩から首にかけてパンパンに張る感じなど、頭痛信号には個人差があります。片頭痛の典型的な頭痛信号に「閃輝暗点」があります。水面に乱反射したようなキラキラした光が視野に広がった後、それまで見えていたものが見えにくくなる症状です。閃輝暗点が5分から1時間程度続いた後に痛みの波が来る人が多く、人によってはめまいを伴うこともあります。緊張型頭痛と片頭痛の両方を持つ、複合型の頭痛も多くの患者さんに見られます。患者数は少ないものの、強い痛みに襲われるのが群発頭痛です。片側の目の奥をえぐられるような激しい痛みで、痛い側の涙や鼻水を伴うのが特徴です。群発頭痛は片頭痛と同じように、脳血管の異常が原因と考えられています。いったん発作が始まると、1~2ヵ月間は連日のように痛みが続きます。
ある製薬会社の調査を私が取りまとめた、慢性的な頭痛に悩む患者さんの心理に関するデータがあります。この調査は、過去1年間に頭痛を経験した20~59歳の男女400人(女性は頭痛かつ生理痛を経験した人)、計800人を対象とした大規模なものです。調査結果によると、週に1回以上頭痛がある人は26.3%だったのに対し、それを上回る34.8%の人が「自分は頭痛持ちだと思う」と答えています。また、月に1回以上頭痛が現れると頭痛持ちである自覚を持つ傾向があることがわかりました。鎮痛剤の使用については、「薬によって助かったことがある」と答えた人が85.8%もいるのに対し、「できるかぎり飲まない」「我慢できないときだけ飲む」など、痛みを我慢する傾向を示す回答が、合わせて79.3%もありました。
調査結果からわかったのは、相当数の人が頭痛を抱えながらも我慢し、できれば薬は飲みたくないと考えていることです。「日本人は我慢強い。痛みにも強い」とよくいわれますが、医学的な根拠はありません。痛みを我慢していると、自律神経のバランスが乱れて、血圧や脈拍、消化管の動きなど、全身に悪い影響を及ぼします。痛みをさらに感じやすくなるおそれもあるのです。国際頭痛学会の基準などから考えると、鎮痛剤の服用は、月に10日までであれば弊害はないと考えられます。痛みを少しでも軽減するために、鎮痛薬を上手に活用してください。鎮痛剤の服用回数が月に10日を超えてしまう場合は注意が必要です。鎮痛薬の過剰な服用は、2次的な頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)を起こすおそれがあるからです。頭痛外来をはじめ、神経内科や脳神経外科で相談するとよいでしょう。エアコンの使用によって屋外と室内の温度差が大きくなる夏は、自律神経のバランスが乱れやすい季節です。体調に異変を感じたら、すぐに専門医の診察を受けるようにしましょう。
喜多村孝幸先生(日本医科大学教授)