関節軟骨の再生力を持つプロテオグリカン!世界最高純度の鮭鼻グリカンの大量生産に成功

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変形性ひざ関節症は、関節軟骨が加齢とともにすり減り、骨を含む関節全体が徐々に変形していく病気です。主な症状はひざの痛みや腫れで、進行するとひざの動きが制限されたり骨の変形が生じたりします。ひざ関節などの関節軟骨の構成成分は、65〜80%が水分です。残りは、主にⅡ型コラーゲンとアグリカン、ヒアルロン酸、軟骨細胞からできています。このうち、近年最も注目されているのがアグリカンです。

アグリカンは、プロテオグリカンの一種です。プロテオグリカンは、臓器や脳、皮膚をはじめとする体全体の組織中に存在するほか、関節軟骨の構成成分としても存在しています。ひとくちにプロテオグリカンといっても、存在する場所や構造などによって、それぞれ異なる名前がついています。アグリカンは、関節軟骨の主役となるプロテオグリカンです。

一般的に複雑な化学構造をしているプロテオグリカンの中でも、アグリカンは最も複雑な構造をしています。ブドウの房の形を想像してみてください。ブドウの房の軸がたんぱく質で、ブドウの粒がコンドロイチン硫酸にあたります。コンドロイチン硫酸は、たわわに実ったブドウの粒のように豊富な水分を含んでいます。しかし、コンドロイチン硫酸から硫酸基が外れたコンドロイチンは、保水性が弱くなった干しブドウに例えることができます。

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アグリカンはヒアルロン酸に結合して巨大な集合体を作っています。これは軟骨の保水性や弾力性を維持し、クッションの役割を果たす重要なバネに相当する構造体です。さらにアグリカンとヒアルロン酸の集合体のまわりをコラーゲンが取り巻くことで、より弾力性のある軟骨組織が形成されます。関節軟骨の軟骨細胞は、関節軟骨内に炭酸水の気泡のように散らばって存在しています。Ⅱ型コラーゲンやアグリカン、ヒアルロン酸からなる「細胞外マトリックス(細胞外基質)」という微小な構造体が軟骨細胞を緩やかに包み込むことで、関節軟骨は形成されているのです。

成人の関節軟骨の厚さは、わずか3〜4㍉程度です。ランニングや激しいスポーツによってひざの関節軟骨にかかる重力は、体重の何倍〜何十倍にも及びます。その重力を薄い軟骨が受け止め、関節の滑らかな動きを支えているのです。関節軟骨という構造体がいかに強靭なものか、想像できると思います。しかし、年を取るとともに、関節軟骨はすり減っていきます。関節軟骨の摩耗の主な原因は、長年の重力による負荷と関節軟骨の再生力の乏しさにあります。

軟骨細胞で作られたアグリカンは、軟骨細胞の周辺に分泌されて軟骨成分となります。アグリカンは、分解と合成をくり返されることで構造が維持されています。ところが、加齢が進むと合成が分解に追いつかなくなります。その結果、アグリカンのコンドロイチンに相当するブドウの粒が徐々になくなって、最終的にはブドウの房の軸だけの状態になってしまいます。また、軟骨組織も薄くなり、もろく弱くなってしまいます。関節軟骨を維持するためには、アグリカンやアグリカンの源となる成分を摂取する必要がありま

そこで、私が注目しているのが、純国産のサケの鼻軟骨から特殊な技術で抽出された世界最高純度のアグリカンです。鮭鼻アグリカンですので、いいやすいように鮭鼻グリカンとでも呼びましょう。弘前大学ではサケの鼻軟骨の機能性を探究するプロジェクトが発足し、多方面にわたる驚くべき効果が判明しました。軟骨の再生もその1つです。

アグリカンは大変複雑な化学構造をしているため、今日まで抽出が非常に困難であるという問題を抱えていました。プロテオグリカンの研究開発がスタートしたのは1980年のこと。当時はウシの気管にある軟骨などが主な原料で、抽出や精製の方法も複雑なものでした。量もごくわずかしか取れず、1㌘あたり3000万円もするような高価な素材だったのです。そんな中、弘前大学医学部教授の高垣啓一先生(故人)が、青森県で豊富に獲れるサケの鼻軟骨に注目。試行錯誤の末、従来とはまったく異なる方法でサケの鼻軟骨からアグリカン(先生はプロテオグリカンと呼んでいました)を抽出することに成功したのです。この試料を用いて、弘前大学の研究機関で広範な研究が行われました。その結果から、アグリカンには次のような効果があることが確かめられています。

● 軟骨再生促進作用

● 抗炎症作用

● 細胞増殖促進作用

● 骨代謝改善作用

● 保湿作用

変形性ひざ関節症の痛みの原因の1つに炎症が挙げられます。関節軟骨自体には神経がないため、初期段階では自覚症状がほとんどありません。その結果、ひざの関節軟骨がどんどんすり減り、大腿骨(太ももの骨)や脛骨(すねの骨)のすき間が狭くなって関節包や滑膜が変形したり、骨棘と呼ばれる骨の突起ができたり、関節軟骨がはがれてかけらができたりします。関節包・滑膜の変形や骨棘、関節軟骨のかけらは、刺激となって滑膜に炎症を引き起こします。炎症が起こると、炎症性サイトカインという炎症を悪化させる物質が産生され、ひざの痛みが生じるのです。アグリカンには、変形性ひざ関節症の炎症を抑え、痛みを軽減する効果が期待できます。さらに、アグリカンには、関節軟骨の表面を滑らかにする性質があります。ひざの関節が滑らかに動くのは、アグリカンが滑らかな関節軟骨の表面を作っているからです。優れた保水力を備えながら、関節軟骨の表面を滑らかにするアグリカンの性質が軟骨形成に重要な働きをすることがわかるでしょう。

高垣先生が当初開発されたアグリカンの抽出方法は非常に画期的なものでした。しかし、当時の抽出方法はあくまでも実験室で行えるレベルで、抽出されたアグリカンを食品などに応用するにはさらなる技術開発が必要でした。そこで私たちは、従来の抽出技術に磨きをかけ、環境に極めて優しい方法で鮭鼻グリカンを大量生産する新技術を開発。鮭鼻グリカンの実用化・製品化に成功しました。

最新の分析技術を用いて鮭鼻グリカンのたんぱく質のアミノ酸を調べた結果、皮膚などの細胞の増殖を促すEGF作用を持っていることが明らかになりました。私は、鮭鼻グリカンのEGF作用が軟骨細胞の増殖にかかわり、軟骨再生因子として働いているのではないかと考えています。

抗菌剤の一つに「ナリジクス酸」という化合物があります。ナリジクス酸を実験用の動物の内に投与すると動きが鈍くなり、よろよろと歩くようになります。実際にひざの関節部分を解剖すると、関節軟骨に大きな損傷が起こることが報告されています。ナリジクス酸によるダメージで関節軟骨からアグリカンが放出され、関節軟骨も破壊されてしまうのです。ナリジクス酸の投与によって、90%以上の確率で関節炎が起こります。

そこで、ナリジクス酸を投与して関節炎を起こした実験用の動物のに鮭鼻グリカンを投与する実験を行いました。その結果、関節損傷部分を持つ70%以上の動物で軟骨損傷が修復されているのが観察されました。鮭鼻グリカンの投与によって、痛がるようすも顕著に減少していることもわかりました。損傷した関節軟骨部分の修復に、鮭鼻グリカンがかかわっていることが証明されたのです。

瀧 孝雄先生(徳島大学薬学部客員教授)

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