腎臓病の怖さは合併症にあり!早期発見で合併症を防げるかもしれません

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慢性腎臓病(CKD)の患者さんが注意しなければならないのは、腎機能の低下に伴って起こるさまざまな合併症です。

私が勤めていた九州大学の研究グループが行った、福岡県久山町の住民を対象にした健康調査で、慢性腎臓病の患者さんは心血管病の発症率が3倍になることが明らかになっています。そのほか、骨粗鬆症や貧血などの合併症も引き起こしやすくなるのです。

合併症の中でも気をつけたいのが「腎性貧血」と「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」です。腎性貧血や骨・ミネラル代謝異常は、推算糸球体ろ過量(eGFR)が45未満(ステージG3b)を境に現れはじめ、30未満(ステージG4)になると高い割合で発症します。

慢性腎臓病になると、どうしてさまざまな合併症が引き起こされるのでしょうか。

腎臓の役割は老廃物を排泄するだけではありません。健康を維持するために欠かせないホルモンも分泌しています。その1つが赤血球を作る働きがあり、"造血ホルモン"と呼ばれている「エリスロポエチン」です。

腎性貧血は、腎機能の低下に伴って腎臓から分泌されるエリスロポエチンの量が減少することで起こります。エリスロポエチンが減少すると、骨髄の赤血球を作る能力が低下してしまうからです。

赤血球の重要な役割は、全身に約60兆個ある細胞に酸素を送ることです。私たちの体を構成している細胞が正しく活動するには、酸素の存在が欠かせません。しかし、腎機能が低下してエリスロポエチンの分泌が減少すると赤血球の数も減少してしまいます。赤血球によって細胞に酸素が運ばれないと、体は酸素不足に陥ります。

体内が酸素不足の状態に陥ると、心臓は全身に血液を行き届かせるため、より激しく働くようになります。その結果、心臓への負担が増加し、心不全が進行してしまうのです。

腎臓は、カルシウムやリンなど、ミネラルのバランスを整える役割も果たしています。カルシウムが骨の原料になることは多くの方がご存じだと思いますが、全身の筋肉を動かすときに情報を伝える役割も果たしています。

血液中のカルシウムは常に一定の濃度に保たれるよう、のどぼとけの下に位置する副甲状腺という組織で調節されています。副甲状腺は体内のカルシウム量が不足すると副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌し、骨に貯蔵されているカルシウムを血液中に送り出します。

さらに、副甲状腺ホルモンは、骨の形成を促す活性型ビタミンDの産生にもかかわっています。活性型ビタミンDは、小腸からのカルシウムの吸収を促進し、骨を形成するうえで重要な役割を果たしています。ビタミンDは、食事から体内にとったり、紫外線を浴びることで合成されたりします。ビタミンDは腎臓や肝臓で酵素の働きを受けることで活性型ビタミンDとなり、小腸からのカルシウム吸収を促進するのです。

腎機能の低下に伴って、活性型ビタミンDの産生量が減ると、小腸でカルシウムを十分に吸収することができなくなります。腎不全になると、リンを尿中に排泄する機能も低下し、血液中のリンの濃度が上昇します。カルシウムとリンはシーソーのような関係で、リンの濃度が上がるとカルシウムの濃度が下がります。慢性腎臓病の患者さんは、「活性型ビタミンDの産生量の低下」「リンの濃度の上昇」という2つの理由によって、血液中のカルシウム濃度が下がるのです。

副甲状腺が血液中のカルシウム不足を察知すると、大量の副甲状腺ホルモンを分泌します。その結果、骨からカルシウムとリンがどんどん溶け出してしまうのが「二次性副甲状腺機能亢進症」という病気です。副甲状腺ホルモンが増え続けることで骨はもろくなり、骨折や骨粗鬆症を引き起こしてしまうのです。

骨・ミネラル代謝異常がさらに進むと、血液中のカルシウムとリンの濃度が高くなります。過剰になったカルシウムとリンが全身の血管に付着し、血管が硬くなる石灰化という現象を引き起こします。慢性腎臓病の患者さんに心臓病や脳卒中などの発症率が高いのは、血管の石灰化が関係していると考えられます。

最近の研究で、骨・ミネラルの代謝異常のカギを握っているのはリンであることが明らかになってきました。リンの蓄積は腎不全になる前のもっと早い段階(ステージG2~G3)から始まっており、そのせいでカルシウム濃度が低下し、二次性副甲状腺機能亢進症を引き起こしている可能性が出てきたのです。

慢性腎臓病は早期の段階から食事療法や薬物療法を行えば、進行を遅らせることが期待できます。また、活性型ビタミンDの不足を補うために、活性型ビタミンD製剤を処方することもあります。しかし、量を使いすぎたり、腎機能が著しく低下している患者さんの場合は、少量の使用でも腎機能が悪化することがあるため、使い方には注意が必要です。

骨粗鬆症や心臓病、脳卒中といった合併症を防ぐためにも、慢性腎臓病そのものの早期発見・早期治療に努めましょう。

谷口正智先生(福岡腎臓内科クリニック透析室室長)

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