ステロイド×脱ステロイド!アトピー改善、美肌再生への道について専門医に聞きました(1/2)

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ステロイド外用剤(以下、ステロイドと略す)を使ったせいで、アトピー性皮膚炎(以下、アトピーと略す)の症状が悪化したと考える患者さんは少なくありません。「色素沈着が起こった」「皮膚がぶ厚くなり硬くなった」「肌が乾燥してボロボロになった」など、悩みを抱えて相談に来る患者さんがいますが、すべてステロイドの副作用ではありません。ステロイドの副作用の場合は、皮膚は白く薄くなるはずだからです。

誤解が生まれる原因は、患者さんが正しいステロイドの使い方を知らないからです。正しい治療やスキンケアを行えば、アトピーは改善します。当院でも行っている、日本皮膚科学会が示す「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(以下、ガイドラインと略す)」にもとづいた治療をご紹介しましょう。

アトピーの改善には、ステロイドの塗る量が重要です。多くの患者さんは、量が足りていません。ステロイドの副作用を恐れ、量を減らしてしまうことが、アトピーを悪化させるいちばんの原因といえます。

1回の正しい量を「1FTU(ワンフィンガーチップユニット)」 と呼び、約0.5㍉㌘です。大人の人さし指の先から第一関節まで、口径5㍉のチューブ状のステロイドを絞り出した量が目安になります。乳液状の塗り薬であれば、手のひらに軽く塗り広げて1円玉大にすることで同じ量になります。1FTUで塗れる皮膚の面積は大人の場合、手のひらの約2枚分です。

さらに、ステロイドの量に加え、塗り方も重要です。肌の上に乗せるイメージで、皮膚の上にステロイドでバリアを作る感覚で塗りましょう。決してすり込んではいけません。症状が治まったからといって、すぐにステロイドの量を減らしたり、薬の強さ(ランク)を低い種類に変えてはいけません。ステロイドの減らし方は、とても慎重に行います。例えば、毎日朝・晩に2回塗っていたのを、週に1日だけ朝塗るのをやめる程度です。個人差があるので、症状を観察し、ガイドラインの内容を理解している医師と相談しながら行ってください。

ステロイドの効果で見た目には症状が治まっていても、皮膚の下では小さな炎症が続いていることは少なくありません。火事の後に火がくすぶっているのと同じです。炎症のくすぶりが、皮膚への色素沈着を引き起こす原因になります。ステロイドを正しく使って炎症を根本から鎮火できれば、多くの患者さんが副作用だと誤解している症状は出ないのです。当院では、適切な量のステロイドを塗ることで、多くの患者さんがアトピーの症状を改善しています。アトピー患者さんは、ステロイドを正しく理解して塗ることが治療の根幹であることを忘れないでください。

ガイドラインでは、外用薬治療のほかに、スキンケアやアレルゲン・カビなどの悪化因子への対策が挙げられています。スキンケアや悪化因子への対策は、あくまでも皮膚の状態が改善してからのケアです。次に、正しいスキンケアの方法をご紹介しましょう。

①汚れを落とす

②保湿する

以上の2つが基本になります。ポイントは自分の皮膚を高級な革だと思い、ていねいに扱うことです。安価なナイロン製タオルでゴシゴシ洗うと、皮膚が傷ついてしまいます。洗うさいは、せっけんを泡立てて生クリームのホイップのような状態にします。泡を皮膚に乗せて素手でなでるように洗い、シャワーで泡とともに汚れを洗い流しましょう。

入浴後はバスタオルで水分をふき取り、肌がうるおっている間に保湿します。自分の肌に合うようなら保湿剤は市販品で十分で、油分を含むものであれば何でもかまいません。

30年ほど前にテレビや雑誌などのマスメディアが大々的にステロイドを批判したことが原因で、ステロイド治療に不信感を持つ患者さんが増加してしまいました。いまでも、ステロイドを危険に思っている方は少なくありません。

程度の差はありますが、どんな薬にも副作用はあります。ステロイドも例外ではありません。私たち皮膚科医もステロイドを使わない治療法がないか、さまざまな研究を行ってきた経緯がありますが、いまのところ見つかっていません。伝えたいことは、ガイドラインの治療法が最良だということです。

私はステロイド治療への不信感を払拭するとともに、正しい治療を行えば、アトピーは改善することを1人でも多くの患者さんに伝えたいと願い、1998年から「アトピー教室」を開催しています。当初は不定期でしたが、現在は週に1度開いています。講演も行い、これまで伝えた数千人の患者さんの症状が改善しています。ステロイドを正しく使えばアトピーは確実に改善することをもっと多くの患者さんに知ってもらいたいと願いながら、今後もアトピー教室を開催しつづけていきます。

江藤隆史先生(東京逓信病院副院長・皮膚科部長)

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