豊富なポリフェノールを含む秋田県のジュンサイは生活習慣病を退け美容効果も抜群だった
良質な水に恵まれ、コメの生産量が新潟県、北海道に次いで全国3位を誇る秋田県。コメのほかにも日本酒、ハタハタ、いぶりがっこなど、さまざまな特産品があります。その中の一つがジュンサイです。秋田県山本郡にある三種町は、ジュンサイの日本一の産地として知られています。
ジュンサイは、淡水に生息するハゴロモモ科(別名、ジュンサイ科)の多年生の水生植物で、水がはぐくむ夏の風物詩として古くから食されていました。かつては日本全国に分布していましたが、現在は4都県で絶滅、21県で絶滅または準絶滅危惧種に指定されています。そうした背景もあり、ジュンサイは現在、日本料理の高級食材として珍重されています。
秋田県総合食品研究センターでは、1995年から秋田県産食材の機能性に関する研究を行ってきました。その中で、ジュンサイには強い抗酸化作用があることがわかりました。その後も研究を重ね、抗酸化成分の正体がポリフェノールであることを突き止めました。この発見をきっかけに、抗酸化作用のほかにも、ジュンサイに秘められた機能性があるのではないかと考えられるようになりました。マウスを使った実験と人間を対象とした試験を行い、ジュンサイの新たな機能性を探索していった結果、生活習慣病を予防・改善する効果のほか、美容効果があることも明らかとなりました。
私たちの研究チームは、近年増加傾向にある生活習慣病を対象に、脂質異常症の改善作用や内臓脂肪の蓄積抑制作用について調べました。マウスを使った実験では、2週間にわたってジュンサイ抽出物を含む高脂肪食を与えたマウス群と、高脂肪食のみを与えた群を比較しました。その結果、ジュンサイ抽出物を含む高脂肪食を与えたマウス群には、有意な改善が見られました。
内臓組織の重量を測定した結果、ジュンサイ抽出物を含む高脂肪食を与えられたマウス群では、マウスの肝臓と腸管膜周囲にある脂肪の重量が有意に減少していました。この結果は、ジュンサイが内臓脂肪の蓄積を抑制したことを示しています。また、同時に採取した血液を調べたところ、肝臓から分泌される中性脂肪とコレステロールの量が減少しており、マウスの肝臓における脂質の再合成を抑制することも示唆されました。
人間を対象にした試験では、腹囲90㌢以上のメタボリックシンドロームの傾向がある健常男性12人を、ジュンサイ乾燥粉末摂取群8人と非摂取群4人にわけ、比較試験を実施しました。ジュンサイを加熱・乾燥した加工粉末を含有する食品を作って、摂取群には1日あたり2.5㌘相当のジュンサイ乾燥粉末を10週間継続して飲んでもらいました。評価項目には、一般的な健康診断で用いられる身長、体重のなどのほかに、動脈硬化罹患リスクと相関性が高い、血中小型LDLコレステロール濃度を測定しました。
その結果、非摂取群では特に変化はありませんでしたが、ジュンサイ乾燥粉末を摂取した群では、小型LDLコレステロール濃度の改善が認められました。小型LDLコレステロールは、血管内皮に取り込まれて酸化しやすく、動脈硬化の原因になると考えられています。これらの結果から、ジュンサイには心筋梗塞や脳梗塞につながる動脈硬化を予防・改善する効果が期待できます。
さらに、ジュンサイはカロリーが低く、美容にもいいヘルシー食材として認知度を上げつつあります。実際の研究でも、ジュンサイの美容効果は確認されています。私たちと共同で研究を進めているオリザ油化の研究では、ジュンサイから新規成分が見つかり、名前にちなんで「ジュンサイノサイドA」という名前がつけられました。ジュンサイノサイドAには、新たな機能性として、コラーゲンやエラスチンを分解する酵素を抑制することによって皮膚のシワやたるみを抑える作用があると判明しています。また、腸内環境を整えて悪玉菌が生成する臭気を減らす働きや、皮下脂肪の蓄積を抑制する働きがあることも認められました。女性では、お尻の皮膚表面のデコボコしたセルライトという脂肪の塊の改善も確認されています。
多岐にわたる機能性を持つジュンサイは健康食品をはじめ、化粧品などにも利用されています。健康増進や美容に役立ててみてください。
畠 恵司(秋田県総合食品研究センター食品機能グループ上席研究員)