国産ネロリとベルガモット発見!水俣病を乗り越えてオーガニック栽培を続ける甘夏の里の軌跡

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環境モデル都市を掲げている水俣市は、熊本県の最南部に位置する人口約25,000人の地方都市です。水俣市にある"ネロリの里"には、5月になると甘夏ミカンの花摘み体験に多くの参加者が訪れます。

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ネロリとは、ダイダイ(ビターオレンジ)の花から水蒸気蒸留によって得られる精油のこと。アロマテラピーや化粧品原料として使用されています。希少で高価な精油としても知られています。実際にネロリは、ラベンダーやローズマリーなどの約10倍の価格で取り引きされることもあります。国産ネロリを日本で唯一、製造・販売しているのが、水俣市にあるネローラ花香房です。国内での生産は不可能といわれてきたネロリ。ネローラ花香房では、オーガニック甘夏ミカンの花からネロリを抽出しています。少し苦めのビターオレンジの花よりも優しく、よりフローラルな香りが特長です。

甘夏ミカンは、ビターオレンジの一種である夏ミカンがミツバチの交配によって突然変異して甘みを増した品種です。熊本県の不知火海一帯では1950年代後半から無農薬有機栽培が広がり、 現在では全国一の栽培面積を誇るオーガニック甘夏ミカンの産地となっています。無農薬有機栽培が広がっていった背景には、「水俣病」の教訓がありました。

漁業に従事していた人の多くは、水俣病により仕事を失っていきました。代わりの収入を得るために甘夏ミカンを栽培するようになったのが、ネロリの里が生まれたきっかけです。自分たちが栽培して人の口に入るものには、農薬や化学肥料は使わない――水俣病を経験してきた生産者には、信念がありました。オーガニックという言葉が知られていない時代。大小さまざまで見ためのよくない甘夏ミカンは、販売でも苦労したそうです。それでも生産者は、徹底してオーガニック栽培にこだわりつづけました。その後、散るに任せていた花が副収入をもたらすこととなったのです。

甘夏ミカンは花つきがよく、収穫する果実の10~100倍の花を咲かせます。ビターオレンジの兄弟といえる甘夏ミカンの花からもネロリを抽出できることを発見したのが、ネローラ花香房代表の森田さん。熊本県の農商工連携支援事業に採用され、"ジャパニーズ・ネロリ"のスキンケア製品の開発に成功しました。フランスのオーガニック国際認証機関である「エコサート」からオーガニックコスメの認証を受けています。

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2015年12月には、甘夏ミカンの果皮から蒸留抽出したベルガモット精油も生まれました。ベルガモットは青い果実の果皮のさわやかな香りの正体です。アールグレー紅茶の香りづけに使われています。手や器具などで果皮を押しつぶす圧搾法という製法で抽出するのが一般的ですが、精油以外の油脂分も混ざります。ネローラ花香房の蒸留抽出法では、より純粋なベルガモット精油が得られるそうです。蒸留抽出のため、紫外線を浴びて皮膚がダメージを受ける"光毒性"の心配もありません。

冒頭でふれた花摘みツアーでは、実際に甘夏ミカンの花を採取するだけではなく、参加者と水俣病資料館を訪問するほか、水俣病被害者でもある甘夏ミカンの生産者と対話する場を提供しています。甘夏ミカンが栽培されるようになった経緯とともに、水俣病の歴史と教訓を多くの人に語りついでいるのです。どこで、誰が、どのような思いで作っているかを知ると同時に、"ふるさとの歴史"について学ぶのも大切なことといえるかもしれません。

エコサートから認証を受けているジャパニーズ・ネロリ

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